朱の蝶

愛はあった

真っ暗な空に、満天の星が輝く

嫌味なぐらいに、夜空を飾る
その星の多さに、ため息交じり
に煙草の煙を吐き出すのは、弦

煙草の煙に、曇る窓ガラス。

遣る瀬無い・・・

食卓のテーブルの上に置かれた
袋の中には水筒と空のお弁当箱

そう、ここは、以前に何度か
訪れた事のある春華の部屋。

今日は、二人で水族館へ出掛け
昼食のお弁当をご馳走になった
代わりに、俺が外食を奢り
彼女を自宅まで送り届け

彼女に誘われるがまま、俺は
この部屋へと招かれ
今、ここに居る。

両手を捲り上げた彼女は
タオルで手を拭きながら
現れた。
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