朱の蝶
「・・・
 父も母も事故で亡くなり
 私にはもう、ゲンさんしか
 頼る人がいなくて・・・
 
 ううん
 
 一度だけでいいんです
 会ってみたいんです
 叔父さんに・・・
 
 確か出所されてますよね?
 
 母に叔父さんから手紙が来て
 出所したら、必ず会おうと
 生前、約束していました・・」

お涙頂戴のこんな芝居ぐらい
私は簡単に演じる事ができる

本当の涙だって流すこと
こんなにも簡単・・・

頼る人、身寄りがいないのは
本当の事だもの・・・

私は、電車に揺られる・・・

私は、もうすぐ貴方に出会う

貴方は、兄のように笑う。

私は、女でありたいと願う。

貴方の前で

捨てたはずの女に戻りたい

そう、願う・・・
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