踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>
「ここのクローンたちのコードって、敵は探知してないの?」

 識別チップが埋め込まれている以上、それを認識する端末があれば表示されてしまう。

「それも心配無いよ、地下は閉鎖されてるからね。携帯の電波が届かないのと一緒、上からいくら調べたって無駄なの」

 真仁が少し離れた距離から天井を指さして説明した。

「あいつが地下を根城(ねじろ)にした理由はそういうことなんだろう」

「う……どうせ僕は頭が悪いよ」

 戒は、いじける翼に笑みを浮かべ真仁を見つめた。

 彼がそうならなくてはいけなかった理由があるのだとするならば、それは心地よい過去ではなかったのかもしれない。

 憶測で物を言うのは好きじゃない。

 戒は瞼を一度閉じ、準備を続けた。


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