幸せの見つけかた
「何もありません。他の人は家庭持ちが多いし、私は1人なので。自分が辞めた方がいいんじゃないかと思っただけです。 …もう、いいですか?」



彼女が、立ちあがろうとした。



「最後に、なにか言いたいことがあれば。」



上野さんの言葉に暫く沈黙したあと、彼女は口を開いた。




「おたくが親会社だったなんて、知りませんでした。そして失望しました。赤字経営を改善するのがリストラなんて… 安直すぎる。 ここがどういう所で、みんながどんな風に働いてるか、何も知らないくせに。」



せきを切ったように話しだした彼女は、今までとは別人のような勢いだ。



「どうせ机でパソコンいじってる人が、数字だけ見て考えたことなんでしょ。ここで人を減らすことがどんな事になるのかなんて、考えようともしないのよ。そんな経営者がいるところなんて、もうウンザリなの!」




一気にまくしたてた彼女は大きく息を吐き、視線を外した。




「これ以上人を減らされたら、やっていけないに決まってる。残ったって、クビを切られたって… どっちも大変なのよ…。」



そして立ちあがって、もう一度俺たちを見た。




「テキトーに決めれば? 私は1人決定だし。リストラしたからって、ここが続くとは思えないし。 後はクジでもすれば? じゃ、そういうことで。」





「適当になんて、してない!」



立ち去ろうとしてた彼女が、俺の叫び声に振り返った。







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