たった一つのプレゼント





「結婚してないですよ」



迅の優しい声が
部屋に響いた。




「そうなんですか!!
 失礼しました…
 では、これからそのような
 ご予定で?」


「いや………」


「違うんですか!?
 もしかして…ごきょうだい…
 なんですか!?」





すると迅は一瞬私を見て
不動産屋のおじさんを
再び見返すと
ふっと笑って


「まぁ…そうですね」



なんて言って歩きだし
部屋を見回し始めた。






「新婚さんに見えましたよ」



おじさんは私に微笑みかけた。




「ごきょうだいとはねぇ…
 とても目立つでしょう」



「そんな事ないですよ」



「いやぁ…芸能人のように
 輝いているお二人です」




おじさんはバンドなんて
興味なさそう。

知らないんだろうな、
私達が芸能人って…



なんてクスッと
心の中で笑った。



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