秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*

――真裕サイド――


…夫婦になる。


分かっていた。

ううん。分かったつもりで、本当は分かってなかったんだ。

今彼の口から出たその一言は、今までのなにより重かった。

重しをつけられたように、急に体が重くなった。


「……」


あたし、最低かも…。

所詮、“そういう目”でしか見てなかった。

あたしは藤峰家次期当主。そんなあたしと結婚する人は、会社を継いでいく度量のある人じゃなきゃならない。

自分や相手の気持ちなんて二の次。

まず第一に“藤峰家”だった。


「…ご……ごめんなさい…」


…違うのに。

本当は違うのに。


確かに度量は必要かもしれない。

けれどそれだけじゃだめだ。

互いの気持ちが通じ合って、同じものを見たときに、初めて成り立つのが“愛”。

そうでないものは、いわゆる政略結婚と一緒。


まず第一に……あたしの、かっくんの気持ちを優先してよかったんだ。

そもそもそれからじゃなきゃ、会社だって成り立たないもの。

あたし……一体何を見てたんだろう…。


そう気づいたとき、溢れ出る涙を抑えることが出来なかった。

そして胸の苦しさで、初めて気づいた。


あたし……不安だったんだ…。つらかったんだ…。

いつもあたし、自分のことにも鈍感だな。


そう思い知った。


だから…。


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