秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*

――楓サイド――


遡ること一ヶ月ほど前。

始まりは、理事長室に呼び出されたあの日だった。



「君に、話があるんだが…」


理事長と思われる初老の男性が口を開く。

バトンタッチして喋り出したのは、もう一人の得体の知れない外国人の男だった。


「キミキミ、コアラは好きかい?」


「……は?」


コアラ? ……は?


「オーストラリアといえばコアラじゃないか」


いや…うん。まあ言われてみればそうだけど。

なんでオーストラリアが出てくる。


「おいおい違う違う。オーストラリアじゃなくてオーストリアだ」


「ああッ。そ、そおだった」


「あっはっは。自分の国の名前を間違えてどおするんだ」


…激しい間違いようだな。

コアラまで出てくるか? ただの言い間違いで。


「いやーっはっは」


「…?」


愉快愉快と笑うおっさん二人。

俺は何で呼び出されたんだよおい。


思わずため息をついたとき、「そうじゃなくて…話があるんだってば」と思い出したような表情で。


「君に留学の話が来ている」


理事長がそう言った。


< 83 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop