王子様と甘い生活

「前もさ、鍵なくしたでしょ?」

「えっ…」

「1年の頃、職員室に探しにきてるのを見たんだよ。」



そうだ。
1年の頃も鍵をなくして、あの時はお母さんも帰りが遅かったから、先生に手伝ってもらって鍵を探したんだ。



「だから前もって、鈴付けて渡したんだ。」

「あっ…お礼が遅くなってごめんなさい、ありがとう」



そう言うと、坂井くんがふっと鼻で笑った。



「でもまぁ。役に立たなかったみたいだけど?現にまた落としてるし。」



うっ…
返す言葉も見つからない。



ピカッ
ゴロゴロ ゴロゴロ



「ひゃっ」



突然、辺りが光り低い音が響いた。
かっ…かみなり!?



「まずいな…電車止まるかも。」



ピカッ
「やぁっ…」

「吉沢さん?」



私は、雷にトラウマがある。

小さい頃一人で留守番をしていた時に、雷が鳴り停電になった。
電車が止まり、お母さんも帰ってこれなくて、何時間も何時間も真っ暗な家の中で1人でいた。

それ以来、雷が大の苦手になってしまった。



「吉沢さん、大丈夫?」

「だ、だめっ…あっまた光った!」

ピカッ
ドーン


両手で耳をふさぎ、小さく縮こまる。
もうやだやだ…帰りたいけど怖いぃ。



すると、突然ふわっと何かに包まれた。


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