先生~あなたに届くまで~
ひとしきり笑って
春菜にもきちんと話をして
ほっぺの膨らみが治った時
教室の扉が開いた。
「はいー。おはよう!
席つけよー!!」
扉が開くと同時に先生の声が耳に入って来た。
その緩い話し方も優しい声も
心を温かくするのに時間を必要としない。
締め付けられるような
温かくなるような
心がその声を聞き逃すまいとしていると
実感してしまう。
それと同時に
“また一日しか経っていないんだもの。
これが普通。仕方ないよね。”と
冷静な自分が自分に言い聞かせた。
皆の流れに従って私も席に着く。
教卓の前を通って席に戻る時
「浅川。おはよ。」と先生が声をかけた。
だから私も自然に笑って
「おはようございます。」と挨拶をした。
挨拶ですら特別なものに変わってしまう。
だけどこれもいつか普通になるんだ。
普通にするんだ。
ともう一度自分に言い聞かせた。