先生~あなたに届くまで~

もうすぐ家に着く。

先生の車の中から見る
見慣れた街並みは
いつもより輝いて見えた。


窓越しに先生を見る。
切ないような穏やかなような
私には読み取れない表情をしていた。


「浅川。」


先生が私の名前を呼ぶ。

私は窓越しに先生を見つめる。


「浅川。
 我慢...するなよ。」


先生は小さくそう呟いて
前を見たまま
私の頭を撫でた。

私の狂った涙腺は
また涙を流しそうになったけど
ぐっと堪えた。

先生に聞きたいことはたくさんある。
先生に話したいこともたくさんある。

でも言葉は出なかったし
言葉はいらない気がした。



“先生も我慢しないで”



心の中でそう呟いた。


家に着く頃には
薄ら月が見え始めていて
心地よい風が吹く夕暮れだった。


―――――――――――――

先生?

言葉は何の意味も持たないと
先生に会って初めて知りました。

あの頃も今も
先生に伝えたいことはたくさんあるのに

何一つ伝えられてない気がするの...。


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