先生~あなたに届くまで~

吐き気がする程の苦しさの中。
心をなくしたい程の悲しさの中。


俺は助けを求めていた。




「せんせい?」



優しい声が聞こえる。

美幸の声か?

「先生」だなんて
あいつはまたふざけてるな。



「先生?」



「ん...?美幸...?」

声がする方に手を伸ばす。
美幸が戻ってきたんだと安心した。

またぎゅっと握ると消えてしまいそうで
逃げない様に消えない様に
そっと腕を掴んだ。


温かい。
このまま消えないで。


「先生...。」


もう一度呼ばれた声にはっとする。

そこにいたのは浅川雪音だった。


< 55 / 220 >

この作品をシェア

pagetop