先生~あなたに届くまで~

「話せないことか。
 それなら
 気が済むまで泣きなさい。」

先生はいつものように明るい声で
頭を撫でた。

さっきの後藤さんの告白は
まるでなかったかの様に
自然に振る舞う先生に腹が立った。

ただの八つ当たり。

頭ではわかっていた。
だけど心はついていかない。


頭を撫でる先生の手を
ばっと払いのけた。


「先生はずるい!!
 ずるいです!!」


先生は払いのけられた手を
元に戻すことをも忘れて
戸惑った顔をしている。

「浅川?」

先生の声にかぶせる様に
私は続ける。


「生徒は恋愛対象にならないなんて
 そんな綺麗ごと...

 みんな...

先生がそう言うことわかってます!!
 それでも諦められないから...
 だから!!
 勇気を出して先生に告白してるのに!!

 告白した人が可哀そう!!
 勇気を出した人が可哀そうです!!」


自分でも何を言ってるんだろうと思った。

後藤さんをかばうように
自分の心をかばって...。

どこまでもずるい自分を
だれかに笑い飛ばしてほしかった。



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