スマイリー
11 笑えない冗談だ
センター試験当日に雪が降るなんて、毎年ザラにあることらしいから別段驚きはしないのだけど、やはりこの寒さはこたえるし、2日間連続で頭をこれ以上ないくらいにフルに回転させたせいで、進のエネルギーの蓄えはほとんど残されておらず、持参してきたチョコレートを食べてみても体温は奪われるばかりだ。



試験会場である、市内の中堅大学を背に、進は大勢の受験生に混じって、駅へ続く坂道を下っていく。



「お、いたいた。進っ」



後ろから追い付いてきたのは、親友の小島あきら。



「おう、お疲れ」



「どうだ、手応えの方は?」



大きく伸びをして、あきらは至極明朗快活に話しかけた。あきらは秀才だから、センターなど本当に小テスト感覚で解いてしまったのではないか、と進は思った。



「自信ないね。マークって、合ってるかどうか分からなくないか?」



「まぁ、試験対策であれだけとってりゃ多分大丈夫だろう。最終的に西京のボーダーにも届いたんだろう?」



「2回だけな。何十回のうちの」



「3回目が今日きてるかもしれないだろ」



「そうなってることを願うよ」



すでに日は沈み、雪が降り積もった道が街灯で照らされてきらきらと光っている。ふたりはその道で特別“転んだり”“滑ったり”することもなく、無事に受験生だらけの電車に乗り込んだ。
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