オレンジ*ロード




『学校来れたんだ!風邪はもう大丈夫なの?』


俺の声に彼女はゆっくりと振り向いた


彼女の口にはマスクがしてあって、1週間ぶりなのに顔が良く見えない


『幸汰…うん、平気。ごめんね心配かけちゃって』


彼女の声が懐かしく感じた


彼女は今日車で学校に来たらしく、もう車で帰ってしまうらしい


理由を聞くと暫く学校を休む為、教科書を取りに来たと説明してくれた


『暫くってどのくらい?』

俺がそう聞いても彼女は曖昧にしか答えない


ただの風邪だと思っていたのに、まだ学校を休まなきゃいけないなんて何かあるのではないかと不安になった


勉強熱心の彼女が教科書を持ち帰る事は決しておかしい事ではないけど

俺は彼女と一年も一緒に居たから分かる


彼女は俺に嘘を付いてる

直感的にそう思った


俺は別れ際、彼女に一枚の紙を渡した


そこには俺の自宅の電話番号がかかれている

携帯がない以上、自宅の電話で連絡を取るしかない


彼女はニコリと笑い、それを受け取った


俺は渡した後で少し後悔していた


それは自分の自宅の番号ではなく、彼女の家の番号を聞けば良かったと


俺はいつだって彼女任せで、彼女は俺の両親にも挨拶してくれたのに


家に電話をかければかなりの確率で親が出る


面識のない俺が彼女の家にかけてどう話しを切り出したらいいのだろう

風邪で大変な彼女よりも自分の意思を優勢させてしまった


すごくすごく後悔した





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