オレンジ*ロード




彼女の体調は一時期より大分良くなり、上手くいけば3ヵ月後に退院できると言われていたが、

最近また体調は悪くなっていた


骨髄移植が成功したと言っても完全に病気が治ったとは言えない


無事に退院出来たとしても再発の可能性もあるし、再発すればするだけ命の危機も増えるのだ


今年の夏は10年振りに記録を塗り替えたぐらいの猛暑で、毎日暑かった


俺も彼女の病院に行くだけで汗だくになり、この一ヶ月で3キロは痩せた


彼女の病室からはセミの鳴き声が聞こえ、夏場はうるさい程だったけど今はそれも収まりつつある


夏が終わり秋が近付いている証拠だった



『喉渇いてない?水飲む?』


数日前から微熱が続く彼女に問いかけた


『大丈夫、ありがとう』

彼女はベッドに横になったまま、首だけ俺の方に向けた


俺は夏休みの間、毎日彼女の病院に行っていた


『たまには友達と遊んで来なよ』と彼女は言うけれど、

俺は彼女と居る時間が一番楽しかった



『もうすぐ夏も終わりだね』


彼女は白いカーテンから僅かに見える青空を見て言った


流れる雲を見ながら彼女は少しだけ寂しそう


口には決して出さないけど、彼女はただ過ぎていく時間が虚しいと感じているんだと思う


一番遊びたい時期に彼女は入院して、春も夏も秋も冬もどこにも行けなかったから





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