オレンジ*ロード




彼女が楽しみにしていた9月1日

俺はオレンジロードに行った


自転車のカゴに彼女が着るはずだった白いワンピースを入れて


そして彼女の魂を自転車の後ろに乗せて俺は走った


彼女は確かに俺の後ろに乗っていた

誰にも見えなくても俺にはしっかりと見えて

彼女の温もり、彼女の声を感じれた


今目の前に広がるオレンジ色の景色、彼女はきっと俺の隣で見ているだろう



『すごくすごく綺麗。私も絶対絶対この景色を忘れない』


そんな彼女の声が聞こえた気がした


その顔は笑っていた

俺がずっと見たかった顔で、俺が一番好きだった顔



涙が止まらなかった


彼女はこの景色を見てどんな事を思ったのだろうか?

彼女と俺は出会った時から一緒で、いつも同じ事を思っていたから

きっと今も同じだと思う



伝えようプロジェクトの紙に書いた二行の言葉


9月1日の今日

病院のロビーにはたくさんの伝えたい事が貼ってあった

色々な人達の思い、
大切な人に伝えたい事


俺は彼女の紙を探した


それはすぐに見つかった

だって俺が書いた紙の隣に貼ってあったから

31日に出すと言っていたのに彼女はすでに紙を投書していた


それは多分俺と同じ理由

きっと紙に書いた言葉が彼女の伝えたい全ての事


そして俺が彼女に伝えたかった事







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