smooch【BL/完結】


一人暮らしを始めて少しして、
脳裏に浮かぶのは母さんとあの家じゃなく
やっぱり、先生とあの部屋だった。
思い出すと胸が締め付けられるような
それをホームシックと呼ぶのなら、
僕の帰る場所は彼の元なのだろうか。



時々は実家に帰ってもみたけれど、
あの人の所へは行かなかった。

だって、会ってしまえば抑えられない。
またすぐに会いたくなるに決まってる。
……それは困る。
ようやく、1人に馴れたというのに。

だからまた近くにいけるまでは
もう、会わないと決めた。



たまのメールと電話だけで、
よくぞ今まで続いたと思う。

以前の、彼と会う前の僕ならきっと無理だ
離れていても会わなくても好きでいられる
いや、どんどんそれは膨らんでいく。
そんなのは、初めてなんだ。



だけどやっぱり寂しかった。


絶対に就職は地元でと、そう決めて頑張った。
電話もメールもより少なくなったけど、
久々に送った、そっちで内定決まったと
そのメールの返信は


『一緒に暮らさない?』

そんな言葉で。



「……プロポーズ……?」


思わず、1人で呟いた。






そうして今、彼の家の前に居る。

インターホンを鳴らすと、
あの頃から4年も経ってるとは思えない
いつも通りの顔で、笑ってる彼が出てきた



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