真輔の風
「あそこのビル、
あの三階建てのビルの二階が事務所です。
一階はスナックで… 三階は住居のようです。」
少し離れたところに車を止め、
タクシーの運転手が指さした。
長屋のような建て方の家が並んでいるところに
一軒だけ造りの違う建物が目立つ。
回りの家と見えるのは…
一階はスナックとか飲み屋になっていて、
二階が住居という、場末の飲食街のようだ。
店の前でも何人かの酒に酔った男たちが
タバコをふかしながら話をしている。
「じいちゃん、あの三階のあの部屋、明かりがついている。
二階は誰もいないみたいだ。
スナックにいるのだろうね。」
すっかり名探偵気分の真輔が、
すぐにでも飛び込みそうな雰囲気を出して
そのビルの様子を話している。
「そうだなあ… 」
そう言って栄作は県警本部に連絡を入れた。
もし茜がいなくても…
家宅捜索をすれば何かが出るだろう。
「じいちゃん、ここで待っていてくれ。
僕は茜を助けてくる。
大きな声で呼んだら加勢に来てくれ。
警察など待っていられない。」
真輔は車から出ると自分では妥当と思われる言葉を出し、
警察へ連絡を終えた栄作に告げている。
こう言う事は、
年寄りではなく若い自分が動くべきだ、
と真輔は当然のように思っていた。