桜の木の下で。
「・・・なぁ、東雲」
「ん?」
「・・・お前が・・陸上辞めたのと・・・アイツ、何か関係があるんだろ?」
「・・・うん」
私はそれ以上、何も言わなかった。
大野先生はそれを察したのか、私の頭をポンポンと叩いた。
「身長縮むわ・・・」
「大丈夫。このぐらいの事で・・・身長は縮まないって・・・」
私にとって・・・大野先生と居る時間が幸せだった。
「・・・あっそう・・・」
それから、1週間後。
私は中等部の荒真先生に用があり、中等部の校舎に行った。
「よぉ、東雲。久しぶりだな!」
荒真先生は私の頭を教科書でポンと叩いた。
「あの、大野先生から聞いてると思うんですけど・・・」
「あ~・・・。待ってろ・・・今、真山先生が持ってるんだよ」
「え?」

「・・・」
「東雲?」
私は大野先生の声で我に帰った。
「大丈夫か?」
「・・・はい・・・」
本当は大丈夫じゃなかった・・・。
だって、アイツが中等部の・・・陸上部顧問だなんて・・・。
「・・・んじゃぁ、後は放課後な?」
「あ、はい・・・」
私は教務室を出た。
「・・・大丈夫・・・だよね」
この時の私は、本当の意味で・・・何も知らなかった。
真山先生がこの学校に来た事で・・・大野先生の居場所が無くなるなんて・・・。
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