桜の木の下で。
その日の夜。
私は大野先生の部屋に行こうと思った。
でも・・・。
「仁菜!何処行くの?」
相部屋の有子はストレッチをしながら私に問いかけた。
「大野先生の所。報告書渡しに行くだけ」
「私も行くっ!!」
私は嫌な予感がした。
「・・・ごめん、有子は一緒に連れて行けない。報告書は第3者には見せちゃいけないから」
「・・・え~・・・」

「・・・」
「東雲?聞いてるか?」
「え?」
「お前、大丈夫か?」
「大丈夫です・・・」
何故か、有子が大野先生の所に行くって聞くと・・・胸の奥が締め付けられる。
「・・・本当に大丈夫なのか?」
「・・・はい」
大野先生は報告書のノートを閉じた。
「・・・橘の事か?」
「え?」
「・・・俺が橘を夏期合宿に同行させるって言ってから・・・お前の様子が変だったからよ」
「・・・気のせいですよ。だって、有子は――」
私の頬には涙が伝っていた。
「東雲・・・お前・・・」
私は部屋を飛び出した。
「東雲っ!!」

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