甘い恋には遠すぎて
『もうここで大丈夫ですね?』
あれからしばらくあの場から動けずにいた俺を落ち着くのを待って、みや美は家まで送ってくれた。
時計の針は11時をとうに回ってしまっていた。
こんな深夜に一人で帰すのは危ないから、俺が送るといい張ったのに、大丈夫の一点張りでここまで来てしまった。
俺は仕方なしに一旦みや美を玄関先に入れ、親父にテキトーに事情を説明し車を貸してもらった。
親父が送ると言ってくれたが、丁重にそれはお断りした。
『なんか逆にすみません……。』
申し訳なさそうに肩を竦めるみや美。
『いや、俺の方こそごめんな……。ありがとな。』
俺のうちからみや美の家までは深夜ということもあり、あっという間に着いた。
『それじゃ、おやすみなさい、ありがとうございました。』
『いや、ほんとこっちこそ、ありがとな。』
何度目かのありがとうを交わし合う。