王子様のヒミツ
「俺のコト好きなの?愛李チャン」

 頭上から聞こえる低い声は、あたしの推測が外れていないことを意味する。でもまさか・・・まさか・・・

「高峯陸王・・・」

 でも今あたしが見上げているのは、あの爽やかなきらきらスマイル・・・じゃない。いじめっ子みたいな小悪魔スマイルを浮かべる王子サマ。

「は、離してよ!」

 両手で力いっぱい胸を押しても、余裕な顔で見下ろしてくる。

「好きな人に抱きしめられてるんだし、もっと喜べよなー?」

「好きじゃないしっ・・・」

「暴れんなって。じゃないとヤっちゃうよ?」

 耳元で聞こえる低音ボイス。くいっとスカートの裾を引っ張って、高峯陸王は不敵な笑みを浮かべた。

 こ、この偽エロ王子ー・・・っ!

「んな顔すんなよ。カワイイ顔が台無しだぞ?」

 キッと見上げるあたしの顔を見て、からかうように笑う高峯陸王。

 む、ムカつく・・・っ!

「あたしもう戻るからっ」

 高峯陸王の腕を振りほどいて、あたしは階段を駆け下りた。


「チェックメイト♪」

 彼があたしの後ろ姿を見ながらそう呟いたことなんて、このときのあたしには知る由もない。
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