エリートな彼に甘く奪われました
私は安東さんと午後の家族連れが目立つ大型ショッピングモールに来ていた。

「お兄ちゃん、何が欲しいかしら」

「うーん、服とか、靴…とか?」

週末は兄の誕生日である。

小さな頃から何となく兄妹の間でプレゼントを贈り合ってきた。

止めるきっかけもないまま今年もこうして買い物に来ている。

…安東さんに電話をして呼び出したのは私の方だ。

遼と距離を置こうと思った瞬間、彼と話してみたくなった。

まるで今の私の気持ちを予言するかの様なあの時の安東さんの言葉。

そして私を好きだと言った真意。

彼と話したい事は沢山ある。

横に歩く彼をちらと見る。

安東さんもなかなかの男前だと思う。

昔から女の子によく告白されていた。

私も少女時代は何年間も彼に恋焦がれていた。

「ん?どうした?」

突然こちらを向いた彼と目が合う。

「い、いいえ」

彼を想いどれだけの眠れぬ夜を過ごして来ただろう。




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