プラトニック・ラブ




声はない。


たまにカチャカチャと皿に当たる、小さな音しかない空間。



この空間は思いのほかに苦しくて、やっぱり上手く呼吸ができなくなる。



酸素が薄いはずはないのに…。



あたしが入ってきたのに2人共何の反応を見せない。


それこそあたしが空気なんじゃないかと思うくらいの扱いで、チラッとも見向きもしない。



ただ無言で食べ続ける親子。


ここでふとお母さんはいないのだろうかと思った。



そんなことは今関係ないと、ハっと我に返ったあたしは慌てて足を前に進める。




苦しい。


ただそれだけ。



進む足が重い。


体が前に進まない。



怖い。



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