─仮面─偽りの微笑み

うふふっと笑いながら「なつくんっ」と近づいて来た母さんは、あっと言う間に親父の腕に捕らえられてしまった。



「きゃっ…もうっ劉兒!!」



「棗はもう大人だよ?…こんなのほっときゃいい」



母さんは恥ずかしいのかもがいていたが、親父が腕を解く様子は無い。



「母さん…父さんの相手してやってよ」



やれやれ…何時もこれだ親父の嫉妬心には参るよ。



「じゃあ…俺は行きますよ…またね母さん」



「えっ…なつくん?!」



チラッと親父に目をやると、「じゃあな棗」と一言いって、母さんに何か囁いていた。



頬を赤く染めた母さんを、満足げに見つめる親父。



「お仕置きか…」おれは小さく呟き実家を後にした。
< 28 / 268 >

この作品をシェア

pagetop