アイツは私の初彼氏
向かい合う決意


ホント、遠いよな……。


『さお、またしばらくは話せないと思う』

拒絶するような克幸の背中。
初めて聞いた、冷たい声音。


視界がじわりと歪んだ。

ああ、そうか。私、泣いてんだな。

そう自覚すると、なおさら涙が零れた。

「バカ、克幸。……お前なんか知るか」





帰ったら、母さんが誕生日のご飯とケーキを用意してくれていた。

みんながお祝いの言葉とプレゼントをくれたけど、私はそれどころじゃなかった。


お祝いムードが終わった後、しばらく部屋に籠もる。

私の心の中は、悲しみより壊れそうな克幸との関係を何とかしたい気持ちでいっぱいになっていた。



―――どうすればいいんだろう?
どうすれば、また克幸と話せるんだ?


考えてみるけど、どうにも答えが浮かばない。

このままだと、また前みたいに避けられるに違いない。

そんなのは嫌だ。


窓からはうっすらと外の光が差し込み始める。

「今日は克幸、朝練だったよな」

きっとアイツは、私に見つからないようにいつもより早く家を出るんだろう。

でもまだ今日は家を出てない……。



 
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