アイツは私の初彼氏


「かつゆ……き?」

立ち上がった私を、克幸は優しく抱きしめた。

沈黙の中でお互いの呼吸を感じる。

ドキドキと、心臓の鼓動が絶え間なく伝わってくる。

私はそんな状態に安心感を覚える様でいて、何だか緊張もしていた。



「遅くなったけど、改めて言うよ」

「ん?」

「―――さお、俺はお前が好きだ。ずっと、さおだけが好きだった」



克幸の言葉が、すうっと溶ける様に私の心に染み渡った。

それは砂糖が溶けた甘くて温かいミルクティーの様で、じんわりと中から広がってくる。

もう一度聞きたい、なんて思ってしまう。



「……さお?」

「うん。ちゃんと聞いてるよ」

「じゃあ聞いてもいいか?お前は、俺の事をどう思ってる?」

「うん……」



私にとって克幸は兄弟みたいなもので、男友達の中では一番の存在―――だと思っていた。

それはずっと続くと思っていたし、これからも変わらないと思っていた。


 
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