アイツは私の初彼氏
知らない感覚


フェンスに張り付く私を見た克幸は、ため息をついて足元に目を落とす。

「……俺のせいだよな。昨日俺がした事が原因なんだろ?」

そ、それは……そうだが。

けど、私はこんな風に逃げるつもりじゃなかったんだ!

心の中で言い訳しても、目の前の相手には伝わらない。

「でも、それならずっと避けろよ。何で呼び止めた?」

「それはっ、」

言いかけて、言葉に詰まる。

続きを待つような様子の克幸と目が合った。

心臓が早鐘を打ち始める。


「……それが、分かれば苦労しない。私だって自分の行動が分かんないんだよっ」

私は克幸から思わず顔をそらした。
状況に耐えられなくなって、ぎゅっと目を瞑る。

そのまま、しばらく沈黙が続いた。



「さお」

足音がした。
声が、近くで聞こえた気がする。

「何だよっ」



< 20 / 116 >

この作品をシェア

pagetop