アイツは私の初彼氏
私は、旭の誘導尋問に乗るような形でさっきの屋上での事を話した。
「克幸のヤツ、1人だけ納得するなんてずるくないか?」
「まぁ、でも私は伊波くんの心境が分からないでもないかな」
「……何だよ、それ」
まるで私だけのけ者みたいな言い方だ。
「伊波くんは多分、怖いんだと思うよ」
「怖い?」
「うん。さおに、嫌われるのがね」
『俺が嫌いか?』
そう聞いた克幸。
遠慮がちに、消え入りそうな声で。
その時を思い出すと、ぎゅっと身体の奥が苦しくなる。
アイツのあんな声、初めて聞いたんだ。
「誰だって、嫌われるのは怖いだろ?」
「でも、好きな人に嫌われるのはもっと怖いのよ?」
「好きな……人?」
私の脳裏に克幸の顔が浮かんだ。