アイツは私の初彼氏


そのまま、克幸はぎゅっと一度私を抱きしめた。

返ってきたものの無事を確かめるかのように。

耳元でため息を吐かれ、妙にドキドキしてしまう。

「ちょ、克幸……」

「っ、悪い」

慌てて離れた克幸は、高木の方に向き直った。

「あーあ、お姫様取られちゃった」

誰がお姫様だ、誰が!

高木は克幸にニラまれながらも、余裕の笑顔を浮かべている。



「……ま、今日はこれで退散しようかな」

しばらくのにらみ合いの後、高木が先にそう切り出した。

そして、C組の教室を出てゆく。

すれ違う瞬間、2人は目も合わせなかった。



「……克幸、あのさ―――」

「何で、アイツとあんな仲良さそうにしてるんだ」

『ごめん』と続けようとした言葉は、克幸の声でかき消される。

タイミングを失ったのと言われた事への驚きに、私は一瞬言葉を失った。



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