CHIME
五時間目
高褄議員はすうっと顔色を変え、校長を振り返った。


校長は顔を真っ赤にして唇をワナワナと震わせながら叫ぶ。


「っ…出たら目を言うなっ!確かに後藤君は殺されたのかもしれない。が、高褄くんがやったなど、証拠がないじゃないかっ!!」


「じゃああいつらが殺っていないって証拠があるのかよっ!!」


透も負けじとばかり叫ぶ。全員がぐっと口を噤んだ。


泉が静かに口を開く。


「証拠が欲しいのなら、御覧になりますか?」


部屋が一瞬にしてしんとなった。


透は目を見開き、校長と高褄は信じられないと言う顔をする。


そんな3人には目もくれず、泉は淡々と喋り始めた。


「後藤君がが殺された現場に、ボタンと髪の毛が落ちていました。
鑑識によると、後藤君が殺害された日、つまり2日前に高褄先輩が着ていらしたシャツのボタンと同一の物でした」


「たまたま同じ服を着てた人物が通っただけだろうっ!」


泉は、意味ありげな笑みを浮かべると、高褄議員を見て、そして静かに続ける。


「現場で見つかった髪は高褄先輩と同じ遺伝子反応が出ました。
同時にその毛髪は後藤の爪の中にも。
もちろん、先輩の皮膚といっしょに。
…殴られている最中に力を振り絞って、腕を引っ掻いたかなんかしたんでしょうね。
その皮膚に僅かな血痕も付着していました。そしてそれも、高褄先輩と同じDNA」


透がはっと泉を見る。


「じゃ…後藤はっ!」


泉は高褄議員を冷たく見、言い放った。


「人間の遺伝子というものは、血液と同じように全く同じ人などそう簡単にはいないんです。
しかも後藤の爪からは先輩の髪の毛と皮膚、さらに血液が検出された。


言い逃れは無理に等しい」


透は校長を振り返った。


その目にはすでに何の感情もこもってはいない。



「校長、あんたは知ってたのか?後藤が奴等に殺されたかもしれないと」


「しっ知らんっ。わしは…何も」


校長は気まずそうに目を外す。


「ふっ…くっくっくっ……はっはっはっ」


高褄が高笑いを上げ始め、その声に全員が彼を見た。

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