CHIME
透はそこで顔を上げ、初めて先輩と呼ぶのもおこがましい奴等の顔を見た。


「断る。と言ったらどうします?先輩」


静かに言った透に、奴等は静かに構えた。


「こうなるんだよっ!!」


 叫びに近い声を上げ、殴り掛かってきた三人を難なくかわし、脇腹に軽く一発ずつ入れる。


 どさりと倒れ込み、それでも何とか立ち上がろうとする先輩達に、透は初めて感心してひゅうと口を鳴らした。


「…すげーな。それ食らって起き上がる事が出来たの、先輩で500人目ですよ」


 明らかに誉めてない。


とりあえず、懲りずに向かって来ようとする奴等に、今度は軽やかに回し蹴りを食らわした。


崩れ落ちるように3人は倒れ込んだ。これでしばらくは起き上がれまい。


 透は息を吐くと、ようやく泉の方に向いた。


 泉はいつの間に立ち上がり、透を静かに見据えている。


「大丈夫か?」


安心して聞いた透に、泉は何も言わず、くるりと方向転換しようとした。


透は慌てて泉の肩を掴もうとして。


「っ!!」


泉は思いっきり透の手を跳ね除けた。


驚いた様に目を丸くした透に、一瞬泉ははっと目を見張ったが、すぐいつも通りの無表情に戻ると、踵を返し歩き出した。


「何だ?一体」


後はただ、呆然とする透だけが残された。
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