よゐしこのゆめ。
「似合ってると思う。良いんじゃない?さすがわたし!」



そう言うと、フジはくしゃっと笑った。



「そっか。なら、しばらくこれでいようかな」


「え?洗濯は?」


「ん?……じゃあ、できるだけする。でもまぁ、ほら、この季節だから汗も出ないし、アニメなんかも同じ服着た奴がいっぱい出てくるんだろ?なら平気だって」


「いや……」


「気に入ったから良いんだよ!特に、この紫の」



そう言いきられると、何だか反論しにくい。


この妙にどきどきする感覚を、これ以上ひどくしないでほしい……―――



「今度お礼に、歩巳が好きそうなものやるよ」



ぽんっと頭に手を置かれて見上げると、フジはにっこりと微笑んだ。



「そういえば、その格好って紅姫さんに怒られない?完全に衣装脱いでるし……」



笑顔が予想外に眩しくて、思わず話題をそらした。


わたし、こんなのばっかかも……


それに気付いてか、フジは小さく笑うと、別に平気だと言った。



「もうだいぶ暗くなったし、帰った方が良いだろ?」



優しくそう言うと、フジは静かにわたしの頭から手を離した。



「あ、そうだね……。じゃあ、今日はもう帰るよ」


「あぁ。またな」



少し駆け足で離れてから手を振る。

フジは片手をジーンズのポケットにひっかけながら、笑顔で手を振ってくれた。



どきどきするじゃん……ばか――――



少し名残惜しい気もしたけど、わたしは何故か、足早にその場を去った。

< 35 / 50 >

この作品をシェア

pagetop