AL†CE!
次の日の昼休み__
「大地功!2年の子が呼んでるぞ~」
クラスで1番大柄な大崎が声を張り上げて大地と功を呼んだ。
「「ひゅーひゅー!」」
クラスメートがヤジを飛ばす。
「うるっせぇよバカ!功!」
大地が眉をしかめて立ち上がると、功もまたあくびをしながら窓側の席から立ち上がった。
廊下にでると、女子生徒が2人、立っていた。
「何か用すか?」
よく顔も見ず、大地は聞いた。
視線をゆっくりと定めると……
「あの…昨日、津川駅にいましたよね?」
申しわけなさそうに2人に尋ねたその少女は、口元にばんそうこうを貼っていた。
立っていたのは昨日の少女だった。
そう、昨日の。
駅では明るかった髪の色は、栗のような焦げ茶におちついて、両サイドでおとなしく結われている。
「口元どうしたの?」
わかっているくせに、わざと功が聞いた。
「ああ、階段踏み外しちゃって!」
大地は思わずふきだした。
少女は心なしか一瞬大地を睨みつけ、笑顔で言った。
「あたし、有末佐柚(ありすえ さゆ)っていいます」
大地と功は目配せした。昨日の女はやはり“有末佐柚”だったのだ。
「昨日のこと誰にも言わないでください!ちょっとバイトでいろいろあって…」
佐柚の目はどこか遠くを見ていた。
その出で立ち全てが、美しかった。
「仕事?」
「まあ…いろいろ?じゃあ、そゆことなんで、お願いします」
大地の質問には答えず、一礼だけして佐柚は走って去っていった。
あとから、一緒にいた、落ち着いた感じの女子生徒も会釈をしていった。