薔薇部屋
とある男性
朝日が、平成には似つかわしい西洋風の一軒家へと差し込む…―囚われの姫君の部屋の、重たそうなカーテンがハウスメイドの手によって開かれる

「おはよう、遠野さん」
「あら、お嬢様、もう起きていらしたのですね」

「カーテンくらい、自分で開けられるわ」
もう子供じゃないのよ?と、ベッドから下り、ミキはカーテンを開けはじめる…―その様子を見て、遠野は困ったように笑った

「子供だとか大人だとか、関係ありません」
遠野は手を動かしながら、話しはじめる
「私はこの家のハウスメイド。お嬢様と旦那様を起こして、食事を用意して…カーテンを開けるのは、私の仕事なのですよ」
遠野はわざとらしく深々と頭を下げて見せた

その言葉、様子に、ミキはそっとカーテンから手を放した

「そうよね」
別に全てやってくれている遠野がミキを子供扱いしているわけではない

「ごめんなさい、遠野さん、少し焦りすぎていたの」
ミキは慌てて遠野に謝った
「また、お嬢様は…奥様に似て、向上心が高すぎて困ります」
向上心という言葉に、ミキは少し嬉しそうに納得し、ベッドに戻った
「お母様も、私のようだったの?」
ミキの言葉に、遠野はくすっと笑った…―その意味ありげな笑いに、ミキは「なぁに?」と興味深そうに身を乗り出した

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