遺伝子【短編】
そう、旦那を殺したのは私。



何故かって?


そんな事は、分からない。
ただ、血を見る事に悦楽を感じていた。

ただそれだけの理由じゃ、殺す理由にならないかしら?


あの、皮を切り裂いた感じや
鮮血が噴き出す様子


ああ、今思い出してもゾクゾクとしてくるわ。

警察は、私に動機が無いのと身重という事で疑いをかける事は無かった。

だから、私も強盗に夫を殺された可哀想な妻を演じていた。

衣服が血まみれになりながらも、夫を抱きしめる可哀想な妻。

しかも、その妻のお腹の中には赤ちゃんが居る。


完璧な筋書き。


私はお腹をさすりながら、お姉さんに体を預けていた。お姉さんは優しく背中をさすってくれている。


本当は、笑い出したいのを堪えていた。

ギュッと血が滲むほど下唇を噛み締め、瞳からはホロホロと溢れ出す大粒の涙。



我ながら完璧。




『早く終わらないかしら』




と心の中で思ってた以外は……
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