遺伝子【短編】
「……ん?苦しいよ…」


俺の声にハッとしたお母さんは、いつもの様子に戻って


「早く手と顔を洗っていらっしゃい。朝ご飯の支度をするから」

そう言って、俺の背中を軽く押した。

俺は言われた通りに洗面所で手と顔を洗うと、居間に向かった。


テーブルには朝ご飯が用意されていた。

トーストの良い香りがする。

お腹がすいていた俺は、バクバクと平らげていった。


満腹になりまた眠くなる。


テーブルの上でうつらうつらする俺に


「早く着替えないと、幼稚園遅れるわよ」


と、怒ったんだ。


そうだった!!

今日は大好きな真弓ちゃんと、幼稚園で一緒に遊ぶ約束をしていた事を忘れていた。

楽しい事を思い出した俺は、早々と着替えを済ますとお母さんに黄色い帽子をかぶせてもらった。


制服には

【年長 バラ組 さかもと かずき 】

の名札。



そう俺は、5歳の幼稚園児。



今日も、いつも通りに幼稚園に行く。



そう、いつも通り……

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