Secret*Hearts


◆憐





見慣れた、自分の部屋。
カーテンもラグも、何ひとつ変わらないその部屋で、たったひとついつもと違うこと。
それは隣で、華梨が静かな寝息を立てていることだった。


“家に帰りたくないよ、憐……”


そう言って俺の腕の中で泣く華梨を、そのまま帰す訳にもいかなくて。

強く抱きしめ、寄り添うように眠れば、少しだけ、ほんの少しだけだけど、その間だけは余計なことは考えないで済んだ。

伝わってくる華梨の体温があまりにも愛しくて、この時間が永遠に続けばいいと思った。


そんなの、刹那の幻影だと、わかっていたけれど。

無常にも陽は昇って、朝はやってくる。


「…憐?」

「……おはよう、華梨。」


頭だけを起こしていた俺を、華梨はぼんやりと見上げてくる。
昨日やはり泣きすぎたのか、若干目が赤くなっていた。

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