赤い狼 壱





――ガララララ…――




荒々しい音が響く。




「な、何これっ!!」




その場で顎が外れるんじゃねぇかっていうくらい口を開けて固まる稚春。



あぁ。まぁ、普通はこういう反応だよな。俺はもう日常化しちまってるから何とも思わねぇけど。




俺も《SINE》に初めて来た時、そんな反応をしたもんだ、とずいぶん昔の事を思い出して懐かしく思う。



慣れってもんは怖ぇな。つーか人間の適応力がスゲェ。マジで人間尊敬する。って、俺も人間だった。




「えっ!?隼人っ!ちょっと、待っ、」




呆然と立ち尽くす稚春に構わず歩き始めると稚春が慌てて走って着いてくる。



コイツ、なかなか可愛いな。親に着いて歩くヒヨコみてぇだ。



稚春がヒヨコに変身したところをつい想像して笑いそうになるのを堪える。




「隼人さん!ちわっす!!」




必死で笑うのを我慢していると《SINE》の奴等が下げていた頭を上げて笑いながら挨拶をしてくる。




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