赤い狼 壱





「つーかあんな必死な隼人なんて初めて見たぞ。連のベッタリぶりも初めてじゃねぇかよ。


……まさか、連と隼人が稚春ちゃんの取り合いしたりとかあんじゃねぇの?」



「は?なんだそれ。一生ないだろ。そんな不思議な現象。」



「おいおい。現象って…。使い方間違ってんだろ。」



「そのくらいあり得ないてっ事。」




銀が笑いながらパソコンのキーを凄い早さで打つ棗を見る。



棗のパソコンの速打ちは銀の携帯の速打ちといい勝負だ。




「でも俺はなって欲しいな~。その現象。」



「俺はなって欲しくない。」




「つーか連と隼人以外にも稚春ちゃんの事好きになる奴居るかもしれねぇじゃねぇか。


二人の恋の話なんてしてる場合じゃねぇかもな。」



「まさか~。」



「そうなったらこれからの《SINE》が心配すぎる…!」



「まぁまぁ~。」




頭を抱える棗の肩を奏がポンポンと慰めるように叩く。


その光景を銀は口角を上げながら、面白い事ににりそうだ、と小さく呟いた。





この時はまだ、誰も知らない。



白兎稚春が《SINE》に大きな影響を与える事になる事を。




この時は、誰も。






《SINE》side~end~




< 139 / 299 >

この作品をシェア

pagetop