赤い狼 壱
「稚春、ありがとな?」
「別に。」
「…顔赤いぞ?」
「うっさい!!」
「って!何で叩くんだよ!」
礼を言ったんだけど叩かれた。地味に痛い。
だけどそんなのも気にせずに稚春を抱きしめる。
ふわり、さっきと同じように香ってくる匂い。
それをもっと求めるように稚春の肩に顔を埋めるとくすぐったいのか少し身を捩る稚春。
それが可愛くてフッと微かに笑う。
稚春の柔らかくて安心感を与える、甘い匂いが好き。
サラサラした艶のある長い髪の毛が頬を撫でるときの綺麗な髪が好き。
子守唄を歌うような優しいその声が好き。
包容力のある、ちゃんと俺自身を見てくれる稚春が―――好き。
「稚春、可愛いーよ?」
「…っ、」
だから、気付いたら口にしてた。
"好き"とは言えねぇから代わりに可愛いって。
俯く稚春を覗きこんで見ようとしたけど手で遮られた。だけど、微かに見えた稚春の赤い頬。
それは照れているということを表していて。俺もつられて赤くなった。マジかよ。