赤い狼 壱




ガクリ。茂さんに体を預けるようにして項垂れる。私が何をしたていうんだ。こんなに私の心を傷つけて!クッソ!こんちきしょう!!



茂さんをジロリと睨む。でも茂さんは戦士としてあるまじき状態、戦闘不能になった私に見向きもせずにニコリ、爽やかに笑って。



「おっと、もうこんな時間か。じゃあ、また見送りの時になー。」




――バタンッ――




「しいいいいぃいいげえええぇええええ!!!」




手をヒラヒラさせて颯爽と部屋から出ていった。





…もう悲しすぎる。なにしに来たの、あの人。




さっき茂さんが出ていった方を涙目でその場で突っ立ったまま見つめる。






………、なんか、疲れた。本当、ここの人達は変わった人ばっかだ。




ふぅ、とさっきの茂さんとのやり取りで溜まった疲労を息をつくことで流す。



「なんか疲れたね。茂さんと凄いパワフルなんだけど。マイペースって言葉で済ませられるレベルじゃないよね、…って、えーと…皆さん?どうかした?」



伸びをしながらクルリ、180度回転をした私の目先に固まっている銀と棗、それと何でか殺気を漂わしている隼人と連と奏がいて、私も思わず一緒に固まる。




え、やだ何、怖い。え、やだ。怖い怖い。特にあの3人メッチャ怖くね?何あの赤髪と黒髪と青髪さん達。え、なに。私何かした?何事?


不可解な現象にパニック状態に陥る。え、このままじゃ私、やっちゃうよ?妄そ…、違った、想像始めちゃうよ?いいの?よろしいの?そう、ならやっちゃうけどなー。何にしようかなー、って、あれ?この前コンビニの店員さんが私の手を急に握ってきて「お嬢ちゃんには羽が生えているのかい!?」って興奮気味に言ってきたこと思い出しちゃったよ、どーしてくれんの。チョットまじどーしてくれんの、あれメッチャ怖かったんだからね、今まで一番怖かったんだからね、どーしてんのホントにもう。思い出しちゃったから今日はもう夜眠れないよ、稚春ちゃん困っちゃうよ、寝れないよぉおおお「稚春…?「すみません、やっぱり今が一番怖いです!!!!」」




脳内に急に低い声が入ってきて思わず反応を示す。なんだこの子、黒髪のくせに怖い。

若干汗ばむ掌を握る。大丈夫、怖くない。連は優しいから大丈夫。大丈夫。



「今のはどういう事かな?」



大丈夫……、だよ、ね?



「分かんない…です…。」


「あ?」



私は悟った。黒髪連くんは怒ったら優しくないんだと。





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