赤い狼 壱





ねぇ、隼人。そんな事言いながら本当はそんな事思ってないんでしょ。



隼人は、不器用なだけで根は優しい。と分かった私はキモい、と言われてもなんとも思わなくなった。



むしろ、隼人が可愛く見えてきた。



本当、素直じゃないんだから。


キモい、と言われているのにクスクスと肩を震わせて笑う私に隼人はもう一度、キモい。と呟いて私から手を離す。




「稚春、少しだけここで待ってろ。」



「うん。分かったよー。」




可愛い隼人が見れた事でご機嫌な私を見て隼人が首を傾げながら、倉庫の奥に進んでいく。



今は何を言われても怒らない自信があるよ、私には。




鼻歌でリズムをとりながら、バイクを弄る作業に邪魔にならないように倉庫の隅に座り込む。



顔に黒い油がついても気にせずに熱心にバイクを弄る人達が目に入って、楽しいのかな?と疑問を頭に浮かばせた。




すぐ目の前で真剣な表情をして色んな道具を使いこなす男の人をジーと見つめる。



バイク弄るのって難しいって聞くけど、本当に難しそう…。



もっと近付いて観察したいな、と私の中にある好奇心がざわざわと騒ぐけど、邪魔になるだろうから立ち上がって観察することにした。




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