桜の木の下で

saido刹那

しばらく自室で桜を眺めていた。

そうしたら急に気配を感じた。

この気配、瑠璃のもの?
急いで気配のする方へ走り出していた。

気配をたどると瑠璃の後ろ姿が見えた。狐の世界は人間界の倍のスピードの遅さで時が流れる。人間界からしたらひと月ぶりか?

思わず瑠璃の名を叫んだ。

「瑠璃!」

名を呼ぶと瑠璃が驚いて振り向いた。
「っ刹那!」

そこには涙を瞳ににためながらこちらを見る瑠璃の姿と向こうに大長老の姿が見えた。

瑠璃、霊力が解放されたのか?久しぶりにみた瑠璃は以前よりもきれいになっていて思わず見とれてしまった。

「刹那?」

瑠璃が不思議そうにわしの名を呟く。

「瑠璃おぬしどうやって」

そう呟いた瞬間どこからか狐火が飛んできた。

「瑠璃危ない!!」

とっさに叫ぶと瑠璃は霊力で狐火を祓った。
強い。
桜乙女の力を使わずとも仙樹の狐火をふり払うとは瑠璃の霊力はやはり強いのじゃな。

そんなことを考えているとまた仙樹が瑠璃に攻撃をしようとするのを大長老が止める。

そして泣きだす仙樹。

そんな仙樹に近寄ると心配そうに瑠璃がこちらを見つめている。

「仙樹。おぬしの気持ちには答えられるのじゃ。
すまぬの。」

そう告げると涙を流したまま仙樹が呟きだした。

「どうして?どうして?私の方が先に出逢っているのに。出会いの順番は関係ないの?」




< 78 / 89 >

この作品をシェア

pagetop