練乳いちごタルト
私のママ
学校から歩いて十五分くらいのところにある『ぴあ』という喫茶店。

そこが、私とママの待ち合わせ場所だった。

帰りのホームルームが終わって、先生に挨拶をすませると、

「あ、瞬ごめんね。私用事あるから、先帰る」

「え、一湖ちゃん?」

幼なじみの瞬を置いて、学校帰りの道を脇道に逸れると、私は一目散にそこへと走り込んでいた。

喫茶店の中に入り、辺りを見回す。

(いた)

「ごめんママ。先生ったら帰りに長話しするんだもの。時間、大丈夫?」

「えぇ、今日は少し余裕があるの。それより座ったら、何か頼む?」

息を切らしてママのもとに駆け寄った私を見て、ママはそんな風に言った。

「もちろん頼むわ」

慌ててママの向かいに座り、私はそう答える。


私のママは、忙しい人だ。

デザイン会社の社長で、バリバリのキャリアウーマン。

この『キャリアウーマン』って言葉は、最近覚えたのだが、ママにぴったりという気がする。

何しろママは、仕事のために家族を捨てた人だから・・・。
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