あたしの愛、幾らで買いますか?
ホテルまでの道のりは虚しいものだった。

手を繋ぐわけでもなく、

会話をする訳でもない。

ただただ、歩くだけ。

名前も聞かれないし。

ただただ、

革靴の音と、

その人の靴の音が響くだけ…。


綺麗とは言いがたいけど、

値段があまりかからないホテルへ到着した。

入り口のパネルで男は

ピピピと慣れた手つきで部屋を決めていく。

部屋のランクは一番下。

普通の女の子なら、

きっと綺麗で

ピカピカした部屋がいいんだろうけど、

あたしはそんなのこだわらない。

触れ合えればいい。


小さなエレベーターは

全く接点のないあたしたちを運んでいく。


―ウィー…ン…


あたしたちの沈黙で

エレベーターの機械音が大きく聞こえる。





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