桜に導かれし魂

隠したもの

夜中物音がしたきがして俺は目を覚ました。でもそれは物音じゃなくて鼻をすする音だった。
「グスッ……………ズッ」
俺は静かに体を起こして音源を捜すとそれはすぐに見つかった。
「…………かえ?」
俺の声に合わせて楓が振り向いた。びっくりしたその顔は涙でびしょびしょだった。
「どうした、どっか痛いのか?」
「ちが……大丈夫だから…………きょうちゃ、寝ていいよ」
お前は何でいつもそうなんだ。なんで俺の心配ばっかりしてんだよ。
こまちと玲夜の横を通って完全に背を向けた楓を向き直らせ、抱きしめた。
「俺たちには隠し事とかなしだろ?」
すると楓の涙が腕に落ちてきた。何度も、何度も俺の腕を濡らしていく。しばらくしたあと楓の唇が動いた。
「…………………くない」
「え?」
聞き返そうとする俺をさえぎって楓は弱々しく叫んだ。

「死にたくないよ………!」
俺を見つめる楓は泣いていた。


「俺が守るから。いっしょにいるから!」
「きょうちゃ……」
気づけば俺も泣いていた。悲しくて苦しくて、楓がいなくなるのが怖くて涙を止める術がみつからなかった。
「……生きたい……生きたいよ」
「………っかえ……………!」
大粒の涙をこぼしながら俺たちは初めてのキスをした。









ただただ願う俺たちを、ただただ祈る俺たちをいったい誰がみているんだろう。
悪魔でもなんでもいいから俺の願いを、楓の祈りを叶えてよ………


外は雨、今日も星は見えない。




















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