桜に導かれし魂

偽りの愛さえも

俺と朱里が付き合っているのが公になるのに時間は掛からなかった。

「おい聞いたか、2組の小湊と3組の佐久間付き合ってんだって!」
「うそ~!以外~!でもお似合いよね」
「わかるわかる!でも小湊君きになってたのにな~。ショックー」
「俺も佐久間と付き合いて~!」

どこにいても俺と朱里の話でもちきりだった。


「1年生に美男美女カップル誕生~☆ですって」
「俺じゃないよ。朱里のことだけだろ」
朱里は確かに美女って言葉があってる。だけど俺に美男なんて言葉は程遠い。
「そうかしら?右京ったらけっこうモテモテよ」
図書室の椅子に腰掛けた俺の後ろから腕をまわす朱里が耳元でささやく。
「考え事してる時の悩ましげな顔がたまらないとか不意に見せる笑顔がやばいとかね」
クスっと声を漏らしたかとおもうと俺の首筋を細い指でなぞった。
「でも私が1番好きなのは………首筋」
「なにそれ、誘ってんの?」
「右京なんか変態にめざめたわね」
体を離して軽蔑の目で俺を見下ろす朱里の腕を引き頬に口付ける。
「でも嫌いじゃないだろ?」
「ふふ、さあね」
とはいいながらも瞳を閉じて顔を近づけてくる。


偽りだらけの愛。それを知ってもなお俺たちを羨ましいと思うのだろうか………








誰もいないと思っていた。
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