桜に導かれし魂

桜の木の末裔



「「いっただっきまーす!」」
「いただきます」
子どもみたいにはしゃぎながらハンバーグを口に運ぶふたり。特にこまちは今日楓そっくりな子に会ったことなんて忘れたみたいにいつもと変わらない様子で手を進める。
こいつの頭どうなってんだろう。いや、どうなってるもなにもただのばかなのかもしれないけれど。もしくはとんだ無神経やろうだな。なんて思ってたら唐突にこまちが話し始めた。
「あ、ねえお母さん、聞いてよ!」
「どうしたの?」
「今日ね、かえそっくりの子がいたのよ!」
「まぁ……他人の空似って本当にあるのねぇ……」
「びっくりしちゃった。……あんまりかえに……に、てて……っ」
平然を装いきれなかったこまちが手を止めて涙を流し始めた。俺たちが黙り込んでいる中、母さんがこまちの頭を撫でながら話始めた。
「お母さんのおばあちゃんね、あなたたちのひいおばあちゃん、ちょっとした予知能力みたいなものがあってね、亡くなる前日お母さんにこんなことを言ったの。“桜の木にやどいしもの、その強き心は時を越え、受け継がれるものなり。その命の灯火消えしとき、お互い似な者が現れ、悲しみに満ちた心を癒し、時に傷をつけながらもあなたのかたわらに寄り添えるだろえる”意味はね、桜の精の末裔は強い信念を持っていた。信念は時を越えて受け継がれていく。その命が途絶えた時、あなたの元にそっくりな子が現れて、あなたを傷つけながらも癒し、側に寄り添う人になるだろう。ってことらしいの。いままでなんのことかさっぱり意味がわからなかったんだけど、今のあなたたち、特に右京に宛てた言葉なんじゃないかと思うの。楓ちゃんが亡くなったのはとても悲しいことだけど楓ちゃんそっくりのその子は楓ちゃんと同じ信念をもってるからこまちや玲夜くん、右京の前にあらわれたんじゃないかしら。そんな奇跡みたいな出会いもまた……運命だと思わない…?」
母さんの話を聞き終わった後俺たちは3人とも泣いていた。ただ黙って涙を流していた。




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