桜に導かれし魂

心留まらず

「おにーちゃーん!!いくよ~」
「わかった。いってきます。かえ」
またいつものようにあわただしい朝を迎えた俺たちはきっと湖夏のことを考えていた。
ガチャ
扉を開けると
「おはよ。右京、こまち」
よそよそしく挨拶する玲夜の後ろには
「おっはよ~右京!と、妹ちゃん?」
湖夏がいた。
「「なんで?!」」
「いや~お前ら待ってたら偶然会っちゃって、そんで一緒に行こうっていうから、おぉ。みたいな」
えへっと言わんばかりに小首をかしげはにかんでみせる玲夜。その後ろで微笑む湖夏。
「っていうかね、私思ったんだけどこのままじゃ遅刻しちゃうよ」
「ほんとだ!お兄ちゃん、玲夜くん急がなきゃ!!」
ぴょんっと玲夜の二台に飛び乗ったこまちが俺をせかす。
「右京!先行くな!!」
「お兄ちゃん、遅れちゃだめだよ~!」
「おい!ちょっ」
俺と湖夏を差し置いて坂道を下っていく玲夜とこまち。
くっそ~。
「遅れちゃうから乗せてって!」
俺の返事を待たずに湖夏は二台にまたがった。
「しゅっぱーつ!」
「ったく。ちゃんとつかまってろよ」
「はーい」
楽しそうな声が俺の鼓膜をくすぐる湖夏の声。楓と同じ桃の匂いが鼻の奥に届く。
楓と同じ顔をしてる、楓と同じ温もりをもつ君さえも愛しい。
大きな坂を下ると開ける視界には桜道。
「うわ~!ここ初めて通った。綺麗ね」
「まぁな」
「あ!ねぇねぇ、妹なんて名前?」
「こまち」
「こまちちゃん?右京に似てるね」
< 57 / 63 >

この作品をシェア

pagetop